第38回日本給食経営管理学会研修会開催報告
第38回日本給食経営管理学会研修会が次の通り開催されました。
開催日時:2025(令和7)年2月28日(金) 18時30分〜20時00分
開催方法:WEB開催<zoomを用いたリアルタイム方式での開催>
(後日オンデマンド配信(2025年3月10日(月)~4月7日(月))
テーマ :日本人の食事摂取基準(2025年版)の概要と主な変更点
講師 女子栄養大学 教授 上西 一弘 先生
座長 静岡県立大学 教授 市川 陽子 先生
今回の研修会では、「日本人の食事摂取基準(2025年版)の概要と主な変更点」として、女子栄養大学教授 上西一弘先生よりご講演をいただき、座長の静岡県立大学教授 市川陽子先生のもと研修会は進められました。この研修会は、リアルタイムとオンデマンド配信で開催しました。
ご講演では、公表された日本人の食事摂取基準(2025年版)の考え方の基本から活用まで、わかりやすく詳細に解説してくださいました。まず、不足や欠乏の予防を目的としていた栄養所要量の頃からの変遷と、2025年度版では、生活機能の維持・向上の観点から、生活習慣病に加えて、新たに骨粗鬆症とエネルギー・栄養素との関連が整理されたことについて説明がありました。骨粗鬆症は、①その疾病の発症や重症化とエネルギー・栄養素との関係を示す図がエビデンスに基づいて描ける、②食事摂取基準の策定対象である複数の栄養素が、通常の食品の組合せで摂取できる量で、症状や状態の改善が見込まれるものという①②の条件を満たしていましたが、フレイルは①はたんぱく質のみ、②はエビデンスが乏しいため、高齢者の章で扱われていることもご紹介いただきました。また、炭水化物では、糖類に対する目標量の設定が見送られた経緯、食物繊維に関しては、日本食品標準成分表の食物繊維の測定法の変更に留意した食事摂取基準の目標量の取り扱いについて説明がありました。「日本食品標準成分表(八訂)を用いた栄養計算で食事提供や摂取量評価を行う際には、摂取基準の目標量と同等、あるいは少し超える値を提供(摂取)できていたとしても生活習慣病予防の観点からは不十分である可能性がある」ことを理解しておく必要があります。食塩相当量の目標量については、2020年版と同じ値であるが、現在の値が最適であるということではなく、食塩摂取量に変化がなかったためであり、減塩を継続することが必要であることが説明されました。鉄では、食事による過剰障害のリスクが無視できるため、耐容上限量が削除されたこと、ビタミンについて、設定された値の背景と目的の説明がありました。
2025年版を理解するうえで、報告書のせめて総論は読むこと、変更点はもちろん変更されなかった点も重要である視点を持つ大切さを教えていただきました。
また、摂取基準は摂取時を想定している値であるため、成分表が七訂から八訂に移行することで生じる見かけ上の差の取り扱いや調理損耗についても留意する必要があるが、給食におけるこれらのエビデンスは十分ではないため、網羅的なデータ蓄積の必要性についてもお話いただきました。
今回の研修会も関心が非常に高く、会員だけではなく非会員や学生も含め、160名の参加登録がありました。ご参加いただきました会員の皆様,また研修会の運営にご協力いただきました皆様に深く感謝いたします。次回39回研修会は,2025年10月頃の開催を予定しております。研修会の詳細が決まりましたら,学会ホームページ等でご案内いたしますので、多くのご参加をよろしくお願い申し上げます。
研修委員会 委員長(2024年度)
田丸淳子(神戸学院大学栄養学部)
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